第26章

詩織は室内から聞こえてくる西園寺瑠璃の甘えた笑い声を耳にした。

彼女は社長室の扉の前に立っていた。手には段ボール箱を持っている。中には最後の私物が入っていた。

笑い声はかすかだったが、耳に刺さるほどに鋭かった。

江藤亘が彼女の隣に立ち、苦い顔で口を開きかけたが、結局何も言えなかった。

詩織はまぶたを伏せ、深く息を吸った。

「中はどうなってる?」

その声は平らだった。まるで会議室の使用状況を尋ねるかのように。

江藤亘は迷った末、声を潜めた。「西園寺様がおっしゃるには……マーケティング部の者がご自身の指示に従わず、浅宮様が陰で扇動していると。九条社長に……」

言い淀んだ。

詩織...

ログインして続きを読む