第29章

詩織は手すりをぎゅっと握りしめた。指の関節が力みすぎて白くなっている。

冷や汗が瞬時にこめかみを伝った。彼女は歯を食いしばり、声を漏らさないよう必死に耐えた。

九条蓮は固まった。

彼女の青ざめた顔を見て、自分がまた彼女を傷つけてしまったことに気づいた。

「詩織――」

「放して。」

声はかすかだった。しかし、その中には誰かを震え上がらせるほどの冷たさがあった。

九条蓮が反射的に手を離す。詩織は体を横に向け、片手で壁を支えながら、ゆっくりと呼吸を整えた。

「お前の傷が……」

「あなたに関係ない。」

彼女は言葉を遮り、その口調は不気味なほど平らだった。「何が言いたいのか、一度に...

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