第30章

朝は、奇妙なほど静まり返っていた。

九条邸の広々とした応接室には、冷え切った空気が澱んでいる。床から天井まで届く窓の向こうでは、庭の楓がすでに秋の気配を帯びていたが、室内はまるで目に見えない重圧に押し潰されたかのように、空気の流れさえも鈍く感じられた。

西園寺景深はローテーブルの向かいに立ち、両手をスーツのポケットに突っ込んだまま、九条蓮を真っ直ぐに見据えていた。その視線には値踏みするような色と、計算高い光が混じっている。

西園寺瑠璃は一人掛けのソファに座り、膝の上でバッグのストラップを指に絡めながら、まだ少し目元を赤くしていた。

九条蓮は上座に腰を下ろし、沈黙を保っている。

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