第31章

虎ノ門ヒルズのオークション会場のエントランスは広々と明るく、来賓が次々と到着している。さざめくような話し声と、大理石の床を叩く革靴の音が重なり合っていた。

 

源枢は立ち止まり、体を斜めにして、視線を詩織に向けた。

「今日、君に同行を頼んだのは」

彼は口を開いた。いつもと変わらぬ、平坦な口調だ。

「一つ、確認してほしいことがあったからだ」

 

詩織は続きを待った。

 

「来月、源家の祖母が誕生日を迎える」彼は少し間を置いた。「ふさわしい祝いの品を選びたい」

 

詩織は微かに呆気にとられた。

そんな理由だとは思いもよらなかったのだ。少し考え、慎重に口を開く。

「お祖母様の好みについて、私は何も存...

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