第33章

車が邸宅の前に停まった。

 

詩織はドアを押し開け、収納ボックスを抱えて降りると、振り返って源枢に軽く頷いた。

「今夜はありがとうございました、源社長」

 

「夕食を一度、ご馳走させてください」

少し間を置き、真剣な口調で付け加える。

「後日、必ず」

 

源枢はシートに背を預けたまま、横顔を向けて淡々と返した。

「もう一回ある」

 

詩織は一瞬きょとんとした。

「……え?」

 

「夕食を埋め合わせにすると言った」

静かな声で促す。その口調は急ぐでもなく、ただ事実を述べるようだった。

「一回分、貸しだ」

 

詩織は少し口を開きかけ、車内で確かにそう言ったことを思い出した。

「――はい。一回分、で...

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