第36章

ドアの向こうから響く蓮の声は、低く、冷ややかだった。

「源氏ホールディングスに退職届を出さない限り、ドアは開けない」

詩織はドアを強く叩いた。手のひらが微かに痺れる。

「不法監禁よ、わかってるの」声は冷水を浴びせた鉄のように冷酷だった。「蓮、頭を冷やして」

返事はない。

廊下に足音が響く。重く、規則的なリズム。次第に遠ざかり、そのまま主和室へ戻ったようだ。

詩織は叩く手を止め、ドアに背を預けた。

 

振り返り、客室を一瞥する。カーテンは閉め切られ、スタンドライトの濁った光だけが落ちている。ベッド脇の小さな机に向かい、ノートパソコンを開いた。有線LAN、接続失敗。Wi-Fiに切り替えても、アンテ...

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