第38章

宙に浮いた礼の手が、ピタリと止まった。

 

詩織はわずかに身体をよじらせ、シワの寄った服の裾をさりげなく整え直した。

「本当に火傷なんてしていないから。そんなに大騒ぎしないで」

 

礼はゆっくりと手を下ろしたものの、まだ疑い深げな視線で詩織の全身を舐めるように見回している。眉間に刻まれた深い皺は、一向に解ける気配がない。

 

玲子はすでに顔を向け、室内の別の方向へと視線を落としていた。

 

源枢は窓際のそばに静かに佇んでいた。片手には上着を軽く提げている。その横顔は湖面のように凪いでおり、先ほどのやり取りなど何も目に入っていないかのようだった。

 

「あの……」

玲子は小さく咳払いをしてから歩...

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