第40章

詩織は玲子の腕に支えられながら、静かな眼差しを景深の顔に向けた。

 

「違うわ」

 

彼女の声は高くないが、はっきりと響いた。

「私は病院にいた。礼が一人でここに来たの」

 

景深は数秒間彼女をじっと見つめ、その蒼白な顔色に視線を留めた。

「浅宮さん、確かにあなたは誰かに指示を出せるような状態には見えないな」

 

彼は振り向いて蓮を見た。

「九条社長、契約破棄の損害は誰が負担するおつもりで?」

 

「私が自ら出向いて謝罪し、補償案を提示する」

 

「ぜひお聞きしたいものだ」

景深はゆっくりと口を開いた。

「九条社長がどう補償するつもりなのか」

 

詩織は玲子の手を離し、二歩前へ進み出た。

 

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