第43章

蓮が立ち去った後、病室には医療機器の低い駆動音だけが残された。

 

詩織はベッドの上でしばらくじっとしてから、ゆっくりと足を下ろした。スリッパを履き、立ち上がって床から天井まである窓へと向かう。

 

窓の鍵を回すと、夜風が流れ込んできた。

 

港区の夜景が眼下に広がり、遠くのビル群の明かりが静かに瞬いている。風は微かな湿気を帯びて髪の毛を揺らし、襟元から滑り込んで、病室にこもった薬の匂いを連れ去っていった。

 

窓枠にもたれかかり、何も考えずにただ立ち尽くす。

 

一日中胸の奥に澱んでいた息苦しさが、夜風と共に少しずつ散っていく。ゆっくりと薄められていくような感覚。

 

吹っ切れたわけではない...

ログインして続きを読む