第48章
病室は、まだ清冽な朝の光に満ちていた。
須藤礼は詩織を見つめた。その表情には、複雑な色が浮かんでいる。
「あんた……父親、いたの?」
「普通の人間には父親くらいいるわ」
詩織は伏し目がちに、事もなげに言った。
「虚空から湧いて出たわけじゃないんだから」
「でも、今まで一度もそんな話——」
「詳しい話はまた今度」
詩織は静かに遮った。
「今は、その時じゃない」
礼は口を開きかけたが、結局それ以上は追及しなかった。
窓の外から朝の光が少しずつ差し込み、ベッドの縁を照らす。暖かく、静かな時間が流れていた。
同時刻、田園調布。
西園寺邸の広大なリビングは、鉛のように重い空気に包まれてい...
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