第54章

スマホの画面で、蓮の名前が静かに光っている。

 

詩織は須藤に視線を向けた。彼女はすでに箸を置き、両肘をテーブルについて真っ直ぐに見つめ返してくる。その瞳が雄弁に語っていた。

――あなたの決断に従う。

 

「分かったわ」電話口に向かって、平坦な声で告げる。「三十分後に着く」

 

向こうで一秒の沈黙があり、すぐに通話が切れた。

 

須藤がすかさず口を開く。

「私も行く」

「いいの」

「詩織――」

 

「礼ちゃん」詩織はペーパーナプキンを手に取り、ゆっくりとした動作で口元を拭った。「あなたは巻き込まれないで。大丈夫、私一人で戻るから」

 

須藤が眉をひそめる。「今夜の電話、あいつのあの口調――」

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