第55章

楠木瑾也は腕時計に目を落とした。

 

「社長。役員会まで、あと五分です」

源枢は書類から目を離さなかった。「まだ時間はある。慌てるな」

「はい」

 

楠木は視線を下げ、デスクの傍らに下がって沈黙を保った。源枢は手元の資料をめくり続けている。その動作に焦りはなく、まるで時間とは無縁の作業をしているかのようだった。

 

きっかり五分後。

 

時計の針が最後の目盛りを刻むと同時、源枢は書類を閉じ、立ち上がった。袖口を整え、役員会議室へと歩みを進める。

 

会議室の空気は、普段よりも数段重く沈んでいた。

 

元老の役員たちはすでに着席しており、それぞれに硬い表情を浮かべている。左側の首座に座る田中守也...

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