第62章

蓮は、灰色のアイコンをじっと見つめた。指の関節がわずかに白くなる。

発信ボタンを押す。

呼び出し音は半コールで途切れ、直接留守番電話に接続された。

通話を切り、もう一度かける。

結果は同じだった。

遠く宴会場から、グラスの触れ合う音やざわめきがガラス戸の隙間から漏れ聞こえてくる。テラスを吹き抜ける冷たい山風。手に残されたシャンパングラスは、すでにぬるくなっていた。

詩織は、そんな真似をする女ではない。

あの年、料亭の席で公然と反発し合った時も、その後の冷戦状態の時でさえ、彼女がこんな行動に出たことは一度もなかった。二人の間がどんなに険悪な空気に陥っても、彼女はただ沈黙し、距離を置...

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