第69章

財産分割協議が正式に発効するまで、残る手続きは最後の一つだけだった。

詩織は書類を胸の高さまで掲げ、最後のページを開いた。直筆の署名が照明の下ではっきりと刻まれている。

宴会場は誰も口を開かなかった。

「この協議書に」口を開いた。声は穏やかで、揺れはなかった。「署名した日は、今年の三月十七日です」

一秒の間。

「その日は、私の二十七歳の誕生日でした」

九条蓮の体がわずかに固まった。

「一人で過ごしました」詩織の目は彼に向いていない。前方を真っ直ぐ見たまま、均一な速さで言葉を紡いだ。「その一方で、あなたは西園寺さんと浅草寺に行き、観光をして、祈願をしていた。記録があります――ホテル...

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