第75章

源枢は生きている。

このことを、詩織は今確認した。

「……すみません」彼女はその場に立ち尽くし、視線を彼の右側の白い壁に落とした。「ノックはしました」

「聞こえた」源枢は平坦な声で言い、ソファの肘掛けに掛けたタオルを取って髪を拭き続けた。「入れ。ドアを閉めろ」

彼は一瞬間を置いた。

「コートを脱げ」

詩織の手が無意識に握りしめられ、指の関節がスーツの襟に押し付けられた。

——ドアを閉めろ。コートを脱げ。

彼女はこの二つを三秒ほど一緒に考え、荒唐無稽ではないが体裁の良くもない結論に至り、すぐにその結論を力任せに押し込んだ。

源枢は床まである窓の前に立ち、ガウンの襟は半ば開いたま...

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