第103章

一ノ瀬蓮視点

  相沢美月のオフィスに立ち、彼女にまつわるものが視界に入るたび、眉間の皺が深くなるのを止められなかった。

  コンコン、と控えめなノック。

  助手の新谷が扉を開け、俺の前に立つ。

  「社長……相沢さんの手がかりは、まだ」

  語尾がみるみる小さくなる。怒りを買うのが怖いのか、俺の目をまともに見ようとしない。

  ――そうだ。相沢美月は失踪した。

  前触れもなく、俺の目の前から消えた。電話も、メッセージも、投げた石が水底に沈むみたいに、何ひとつ返ってこない。

  その矢先だ。

  うちの工場で事故が起き、建屋が崩落して複数の従業員が閉じ込められた。

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