第110章

一ノ瀬雅人は私を一つの部屋の前まで案内すると、自分は何事もなかったように隣の部屋へ入っていった。

……それだけ?

彼の背中を見送った瞬間、眉間にしわが寄る。

そして本当に隣の扉が閉まったのを確認すると、私は堪えきれず目の前のドアノブに手をかけた。

中は主寝室だった。やけに広い。入口からでは奥が見えず、胸の奥がざわつく。

大丈夫、だよね……?

「一ノ瀬蓮……いる?」

呼びかける声が、自分でも分かるほど小さくなっていく。足取りも、慎重というより臆病に近い。

もし、これが別の手口だったら。

私はまた、自由を奪われる。

「一ノ瀬蓮……?」

そのとき、横からいきなり手が伸びてきて...

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