第113章

相沢美月視点

  息を奪われた、その瞬間。

  不安は、なかった。

  乱暴に独占されているみたいなのに、不思議と嫌じゃない。

  一ノ瀬蓮が、私にキスをした。理由なんて分からないのに、どうしても突き放せなかった。

  ――耳元で、低い声が落ちるまでは。

「や……っ!」

  はっと正気に戻って、私は彼を突き飛ばした。

 一ノ瀬蓮はほとんど無防備で、ソファの背に軽くぶつかり、「……っ」と短い呻き声を漏らす。

  そこでようやく気づく。

  いつの間にか私は、彼に抱えられたまま膝の上に座らされていた。息が触れるほど近い距離。逃げ場のない密着。

「な、なんで……」

  声が...

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