第115章

車内は、ぱたりと音が消えた。今度は、顔を上げる勇気すら出ない。

どれくらい経ったのか。

一ノ瀬蓮が、そっと私を腕の中へ引き寄せた。

低く、けれど優しい声が耳元に落ちる。

「住所を見たとき、深く考えなかった。君と連絡がついてから、そこが唯一の手がかりだったから」

背中に回った手が、やわらかく――けれど確実に私の体勢を整え、彼の胸へ預けさせる。

その言葉に、私は固まった。顔を上げて彼の表情を確かめたいのに、どうしてもできない。

一ノ瀬蓮の手が、私を軽く拘束するみたいに動いて、彼を見上げる隙を与えてくれない。

「一ノ瀬さん……」

なぜだろう。今、表情が見えないのが悔しい。きっと、...

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