第123章

相沢美月視点

 一ノ瀬蓮の腕に絡めた手のひらが、じっとり汗ばむ。神経が張り詰めて、息の仕方すら忘れそうだった。

 朝、一ノ瀬蓮と同じテーブルで食事をした時から感じていた。隣にいる男の、いつもと違う妙な気配を。

 何かに緊張している。何かを気にしている。

 深い眼差しが、ずっと私に刺さったまま、一度も逸れない。

 その微妙な圧が、どうしても私を落ち着かせてくれなかった。結局、私は彼のことばかり気にしてしまう。

 今の彼は、明らかに拗ねているように見えた。だから私は、彼の望む通りに、黙って隣に立つしかない。

 エレベーターを降りた瞬間、私と一ノ瀬蓮の動きを窺う視線が、また一斉に飛ん...

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