第126章

耳元で神谷陸の声がした。

「美月? 相沢美月。何ぼーっとしてるんだ」

私ははっとして目を見開いた。自分でも気づかないうちに、さっきよりさらに頬が熱くなっている。

「相沢美月……?」

一ノ瀬蓮も同じように視線を落として私を見た。整ったその目に、私には読み取れない色が宿っている。

さっきまで頭の中は一ノ瀬蓮のことでいっぱいだった。いまこうして目が合うだけで、心臓が落ち着かなくなる。

歯を食いしばり、動揺を悟られたくなくて、できるだけ平静を装う。

「……とりあえず、中に入りましょう」

ほかにうまい逃げ道が見つからず、私はいったん意識を全部引き戻した。

一ノ瀬蓮はすっと身を引き、こ...

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