第129章

本来入口にいるはずの人影が、きれいさっぱり消えていた。

一瞬だけ迷ったけれど、結局、何も言えないまま廊下へ出る。

「ちょっと見てくる」

人が忽然と消えるなんてあり得ない。誰かが細工をしたのなら、今すぐ突き止めなきゃ。

病室の外へ足を踏み出した、その背中に神谷お婆さんの声が追いすがってきた。

「美月、戻っておいで。美月!」

振り返らない。スマホを取り出し、一ノ瀬蓮に発信する。

呼び出し音が鳴る間も、私は周囲に目を走らせ続けた。けれど、どこにもいない。

最後の望みを電話に託して、画面を食い入るように見つめる。早く出て――そう願ったのに。

繋がらない。

おかしい。

一ノ瀬蓮が...

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