第20章

一ノ瀬蓮視点

  神谷シズの賀寿の席など、本来なら気にも留めない程度のものだった。

  だが、自分の子を身ごもったと名乗る女が、神谷家に逃げ込んだ。

  だから俺は、この寿宴に顔を出した。

  壇上で、相沢美月は妊娠したことを告げた。しかもその子は神谷陸の子だ、と。

  小さな顔いっぱいに滲んでいたのは、傷ついたような痛みと、耐えきれないような委屈。男の庇護欲を煽るには十分すぎる。

  俺はその茶番を眺めながら、こいつの言葉のどこまでが本当で、どこからが嘘なのか、判別がつかなかった。

  その時だ。

  白石萌が倒れた。しかも狙い澄ましたみたいに、相沢美月のいる方へ。

  ...

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