第39章

男は眉をひょいと持ち上げ、私を見る目に、言葉にしなくても分かる色気を滲ませた。

その表情を前にすると、なぜか言葉が出てこない。

彼は本気で、私が自分に「別の気持ち」を抱くかもしれないと思っているらしい。そういう前提で見られている感じが、少しだけ居心地が悪かった。

「……あの、ちょっと外出してきます」

私は話題を切り替えるように言い、さりげなく距離を取った。

この時間ならまだ大丈夫。神谷本邸で何が起きているのか、様子を見に行ける。

一ノ瀬蓮がこの時間に戻ってきたのも、きっと彼自身に用事があっただけだ。さっきの私は少し調子に乗っていた。まさか「私に会いに帰ってきた」なんて、そんなこと...

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