第73章

相沢美月視点

 一ノ瀬蓮は、私を見たまま固まっていた。顔いっぱいに浮かんでいるのは、これまで一度も見たことのない表情。

 私は驚いて彼を見返しながらも、まさか――私に見惚れていた、なんて確信が持てない。

「……こほんっ」

 わざと咳払いをして注意を引くと、彼はようやく我に返ったように視線を外した。

 深い眼差しが横へ流れ、一ノ瀬蓮は絶対的な理性を帯びた声で言う。

「神谷陸が、君にもう別の気持ちを持っていないと……本当に言い切れるのか?」

 神谷家でのあの揉め事と、神谷陸の態度の変化が脳裏をかすめる。私は思わず冷笑した。

「彼みたいな最低男、仮に私に何か思うところがあったとして...

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