第82章

一ノ瀬蓮視点

 隣に座る女へ視線をやる。彼女の瞳にあるのは、驚くほどの平坦さだった。

 一ノ瀬雅人が何を言おうと、相沢美月は本質的に気にしていない。

 なぜだろう。それに気づいても、ちっとも愉快じゃない。むしろ、胸の奥がざらつく。

「これは俺の問題だ」

 もう彼女の手を取りにいくことはしなかった。落ち着いた顔で雅人を見る。ついでに、相沢美月の表情も丁寧に拾う。

 本当に一ミリも動かないのか確かめたかった。

 結果は、変化なし。

「そうか?」

 雅人がふっと笑った。

「なら、忠告だけはしておく」

 向かいのソファに腰を沈め、湯呑みを持ち上げて一口。

「川波正范がどういう...

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