第83章

相沢美月視点

 向かいにいる一ノ瀬雅人を見つめる。薄皮一枚のところで漂う敵意が、まだ消えていない。あいつは引き下がる気なんてさらさらなくて、これからも私に絡み続けるつもりなんだろう。

 奥歯をぎり、と噛みしめる。こっちの我慢だって、もう底が見えてきた。

 これ以上続けたら、私がいつ顔色を変えるか――自分でも保証できない。

 「もういい」

 一ノ瀬蓮が私の手を取り、そのまま立たせた。

 「そんなくだらないことでいつまでも引っかかってるなら、神谷陸のほうは自分で片を付けろ。俺は美月を連れて帰る」

 男はいつもの強引さを取り戻していて、私の手を握ったまま、拒む隙すら与えず歩き出す。

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