第84章

神谷陸が私の前に立ちはだかる。瞳の奥にあった狼狽は、いつの間にかすっと凪いでいて――そして彼は、ふっと笑った。

「相沢美月。まだ状況が分からないのか? 俺と川波正范の関係、見ても分からない?」

たしかに、あの二人の距離感は異様だった。けれど私は、そこまで深刻に受け止めていなかった。

「あなたと川波正范がどれだけ特別な関係でも、それが私と何の関係があるの?」

正面を塞がれて、無理に通り抜けることはできない。だから言葉で突き返すしかなかった。

まさか――川波正范を使って、私に何か仕掛けるつもり?

私は神谷陸の目をまっすぐ見返す。

彼は自信満々に顎を上げ、見下ろすような口ぶりで言った...

ログインして続きを読む