第87章

千代は唇をきゅっと結び、ためらいがちに口を開いた。

「碧山さんと先生って、けっこう仲が良かったんです。婚約寸前までいったって話もありますし」

思わず、手に力が入る。私の異変に気づいた千代が、慌てて取り繕うように言った。

「お嬢様、どうか傷つかないでくださいね。あれは昔のことですし、今とは関係ありませんから」

私は一瞬きょとんとして、すぐ首を振った。

「誤解しないで。別に傷ついてない。ただ、ちょっと意外だっただけ」

「今日の宴で碧山さんに会ったの。……一ノ瀬蓮と、すごく親しそうに見えたから」

千代は何度も私の顔色を確かめ、そこに陰りがないと分かると、ようやくほっと息をついた。

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