第96章

早く電話を切りたかったのに、神谷陸は相変わらずしつこかった。

私は何度も向かいの一ノ瀬蓮へ視線をやってしまう。――このやり取りが、彼の機嫌を損ねないかが怖い。

電話の向こうの神谷陸なんて、どうでもいい。

彼が何を言おうと、私には関係ない。私が気にしているのは、一ノ瀬蓮だけだ。

たぶん、ずっと前から気づいていた。胸の奥にある、この妙な感情の正体に。

でも、責任を取れる自信がないうちは――守らなきゃいけない。

私のことも。

一ノ瀬蓮のことも。

私たちの、すべてを。

「神谷陸。最後に忠告しておく。これ以上つきまとうなら、ただじゃ済まさない」

声の冷たさを、もう隠さなかった。

...

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