第97章

電話を切ると、部屋はすっかり静まり返った。

私は急に、彼とどう向き合えばいいのか分からなくなる。

二人きりの空間には、どこか致命的な匂いがある。とくに一ノ瀬蓮がこちらを見てくるときは。

「一ノ瀬さん、さっきは私の代わりに言ってくれてありがとうございました。あのままだったら、あの人、いつまででも絡んできたと思います」

確かに、さっきの一ノ瀬蓮は私を庇ってくれた。

なのに、今は空気だけがすとんと冷えたみたいに重い。

私は不安げに彼を見上げる。胸の奥がざわついて、理由もなく背筋が粟立った。

一ノ瀬蓮の機嫌は、さっきより良くない。

私に向けた目も、さっきのような優しさがない。

嫌な...

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