第4章

あの夜の衝撃から一週間。私が告げなかった真実と、彼が知らない秘密は、透明な壁となって私たちの間に横たわっていた。それでも日常は、何事もなかったかのように続いていく。

特に話し合ったわけでもないのに、いつの間にか、私たちには朝の習慣ができていた。瑛斗がコーヒーを淹れ、私が朝食を用意する。彼の心の声をBGMに、私はその習慣を密かに楽しんでいた。

『彼女は薄めのコーヒーが好き……大学の時と同じだ……彼女のことは、全部覚えてる……』

『全部、ですって? 他に何を覚えてるっていうの、神谷瑛斗』

彼が私のマグカップ――例の、彼にとって神聖らしい青い花柄のそれを――手渡してくれる。指先が...

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