第8章
私たちのマンションの、リビングのドアの前に立ち、私は瑛斗の大切な思い出が詰まった木箱を握りしめ、一つ、深呼吸をした。これで、決めるんだ。彼にすべてを打ち明けよう。彼の心の声が聞こえることも、日に日に大きくなるこの気持ちも、そして、私を手放さなければならないなんて考える彼が、どれほど間違っているかということも。
ドアを押し開けると、そこにはソファにぐったりと沈み込み、ノートパソコンを開いたまま、深く落ち込んだ様子の瑛斗がいた。
『今夜のうちに荷物をまとめるべきか……彼女が、楽に別れられるように……』
胸が、締め付けられる。私はコーヒーテーブルの上にそっと木箱を置いた。
「瑛斗、...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章

11. 第11章


縮小

拡大