第5章

彼らが絶望と見間違えた、氷のように冷たい目で二人を見上げた。「荷物をまとめる時間が欲しいの。一日だけ。明日には出ていくわ」

「話が早いわね」杏奈は満足げに微笑んだ。「恵美子、最初からそうしていれば、こんなことにならなかったのに」

「今夜は百合子と寝るわ。あの子、ショックを受けてるから」私の声は穏やかだったが、一言一言ははっきりとしていた。「明日、住む場所を見つけてから出ていくわ」

雅人は百合子に皺くちゃにされた服を直し、その目には勝ち誇った色が浮かんでいた。「賢明な判断だ。いいか、慰謝料は一円も期待するなよ」

私は頷き、百合子を抱きかかえて二階へ上がった。

その夜の十一...