第6章
愛莉視点
診療所の受付でカルテの整理をしていたときだ。田中さんと鈴木さんが、いつもの噂話に花を咲かせながら入ってきた。
「おはよう、愛莉さん」田中さんは小鳥のような明るい声でそう言ったが、その目は鋭く、何かを値踏みするような光を宿していた。「仕事にはもう慣れたんでしょう?」
「ええ、おかげさまで」私は顔を伏せ、書類仕事に没頭しているふりをした。
だが、二人は診察に来たわけではなかった。待合室の椅子に我が物顔で腰を下ろすと、女性特有の、誰かをこき下ろす直前のあのひそひそ声で話し始めたのだ。
「あの愛莉って子と黒崎先生、ずいぶんと親密みたいじゃない」田中さんの声は、私が一言一句聞き...
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