第8章

恵理視点

キスが終わり、ホールはまだ熱狂に包まれている。フラッシュの光。拍手。誰かの叫び声。騒音が渾然一体となってカオスと化していく。

私は新さんの胸に顔を埋めていた。逃げ出そうとするみたいに激しく脈打つ彼の心臓の音が聞こえる。

「白銀さん! いくつか質問にお答えいただけますか?」

「恵理さん、今の告白にどうお応えになりますか?」

囁き声が群衆の中にさざ波のように広がる。「信じられない」「本当に契約書を破り捨てたわ」「美也子様の顔、見た?」

正人さんが、プロフェッショナルで、毅然とした態度で私たちの隣に現れた。

「はい、皆さん、こちらはこれで終了です。白銀さん...

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