第280章 苦いのが苦手なルカス

書斎の机に向かい、アネルは領地に関する直近の重要書類に目を通していた。公爵の帰還により、ヴェルリット領の人々は確かな後ろ盾を得て活気づいている。それに伴い、処理すべき案件も増加していた。もっとも、大半は商人や農民、牧場主といった者たち自身で解決できるため、公爵のもとに持ち込まれるのは、判断に迷う難題や手に余るトラブルに限られていたが。

税収簿を一冊確認し終えたところで、エリサの隠しきれない笑い声が耳に届いた。顔を上げ、彼女の視線を追う。そこには、筆を握りしめて座るルカスの姿があった。小さな眉間にしわを寄せ、長いこと迷った末にさらさらと紙に一行書きつける。だが、どうもしっくりこないらしい。彼...

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