第8章 囲まれた?

目の前で不良のボスの手が自分の胸に触れようとするのを見て、石川明美の心は喉元まで飛び出しそうにはさみを握る手のひらには汗がびっしりと溜まっていた。

その千載一遇の瞬間、突然冷たい声が響いた。

「誰が彼女に手を出すか、見ものだな!」

「お前は誰だ!」

不良のボスが振り向くと、田中尋の人を食いそうな眼差しと真正面から向き合うことになった。

田中グループ、知らぬ者はなく、街中で田中グループの若き当主、田中尋についてのインタビューが連日流れているほどだ。

「あぁ、田中坊ちゃんですか、ご高名は伺っております。初めてお会いしましたが、テレビで見るよりもずっと格好いいですね」

田中尋は眉をひ...

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