第100章 八ヶ月後。

八か月後、F国。

綾部栞は庭のデッキチェアにもたれ、ふくらみきったお腹をそっと支えていた。臨月に入ってからというもの、足首のむくみも目に見えて増えている。

隣には太田おばさんが腰を下ろし、丁寧に足を揉んでくれていた。

「あと十日で予定日ですね」

「この時期は特に気をつけないと。早まることもあるし、逆に遅れることもありますから」

綾部栞は小さくうなずき、いちばん楽な角度を探して背を預け直す。

春が過ぎたばかりで、まだ夏には届かない。空には日がかかり、陽射しはやわらかく肌を温めた。

太田おばさんの声を子守歌みたいに聞いているうちに、綾部栞のまぶたが重くなる。

それに気づいた太田お...

ログインして続きを読む