第102章 彼の頭の中に綾部栞の美しい顔立ちがよぎる

綾部家。

伊沢婆さんはここ二年ほどで、めっきり身体が弱っていた。いまでは自力で歩くこともできず、移動は車椅子が欠かせない。

空港は人の出入りが多く、落ち着かない。だから伊沢婆さんは朝早くから綾部家へ向かい、先に待たせてもらうことにしたのだ。

綾部玉季は伊沢婆さんを屋敷に落ち着かせてから、空港へ綾部栞たちを迎えに行った。

そして綾部栞が帰宅すると、伊沢婆さんは庭先でそわそわと待っていた。

車が止まるやいなや、坂東執事が車椅子を押し、伊沢婆さんを綾部栞の前まで連れてくる。

「栞」

声は震え、どこか弾んでいた。

この三年、連絡は取り合っていた。けれど、画面越しではない栞を目の前にし...

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