第103章 彼の端正な顔立ちは影の中に隠れていて、表情が見えない

坂東執事は、伊沢赤司がソファに身を預けているのを見た。冷えた横顔は微動だにせず、表情の起伏もない。思わず、小さく息を吐く。

「若様……」

まだ何か言いかけた、そのとき。伊沢赤司はすでに立ち上がっていた。淡々とした顔つきで、坂東が何を言おうとしているかなど最初から分かっているように。

「会社に少し用がある。戻る」

坂東執事は言葉に詰まり、結局何も返せないまま、伊沢赤司が伊沢本家を出ていく背中を見送った。

赤司はガレージへ向かい、ドアを開けて運転席に滑り込む。エンジンをかけ、そのまま走り出した。

伊沢グループへ――そう思ったのも束の間。

オフィスビルの足元まで来たところで、赤司はふ...

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