第106章 これから彼女を若奥様と呼ぶな

北条清森がその動画を目にした瞬間、反射的に伊沢赤司へ転送した。

伊沢赤司のスマホは、仕事の連絡と経済ニュースを読むための道具だ。こういう娯楽寄りの話題には、ほとんど触れない。

それでも――北条清森から送られてきた動画を、彼は指先で開き、流し見した。

画面の中には宮本西衛がいて、綾部栞のすぐ隣に立っている。さらに栞の腕の中には、小さな子ども。

年のころは二歳前後。栞の肩に頬を寄せ、眠気に負けそうにまぶたを重くしていた。顔立ちは栞によく似ていて、愛らしさが胸を刺す。

伊沢赤司は顔を強張らせたまま、動画を閉じた。

だが北条清森は、彼の傷口をわざわざ抉るみたいに、今度はコメント欄のスクリ...

ログインして続きを読む