第109章 伊沢赤司は非表示にして

「余計なことを申しました」

坂東執事は伊沢赤司の不機嫌そうな顔を見て、頭を垂れた。表情にはわずかな申し訳なさが滲む。

伊沢赤司はソファに深く身を沈め、目を閉じたまま手をひらりと振る。

「下がって休め」

坂東執事は小さくうなずき、気配を消すように退いた。

使用人部屋から出てきた林田は、リビングのソファに座る伊沢赤司を見つけた。眉間に皺を寄せ、いかにも苦しげな顔をしている。

「若様」

「お酒、召し上がりましたか」

林田は声を落として尋ねる。

伊沢赤司は目を開け、林田を一瞥してから、わずかにうなずいた。

「……ああ」

このところ連日の接待続きだったせいか、顔色も冴えない。

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