第110章 伊沢赤司が胃病で入院、綾部栞が救急対応

綾部玉季は彼を一瞥すると、伸びてきた手をぱしりと払いのけた。

「まだ結婚もしてないのに、もう子どもの話?」

北条清森が口を開きかけた、そのとき。

玄関のほうで物音がして、綾部父が外から戻ってきた。

朝から友人と釣りに出ていたのだ。妃奈ちゃんに滋養のあるものを食べさせたくて、魚でも釣って帰ろうと思っていたらしい。ところが、座って糸を垂らして間もなく、太田おばさんから電話が入った――北条清森が綾部家に来ている、と。

北条清森と綾部玉季は、長いこと付き合っている。

二人とも結婚適齢期。綾部父だって、彼が何のために訪ねてきたのか分からないほど鈍くはない。

娘を幸せにしてくれるなら、それ...

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