第112章 彼女は伊沢赤司の心の中から消えたくない

北条清森は、自分が伊沢赤司の神経を逆撫でしたことを分かっていた。だから、それ以上返信する勇気が出ない。

一方、病室の伊沢赤司はスマホを手にしたまま、北条清森から届いた文面をじっと見つめ続けていた。

看護師が点滴のボトルを交換しに来て、ようやく彼はスマホをしまう。瞳の温度も、すっと冷えたものに戻った。

昼食は林田さんが用意して病室へ運んできた。ついでに綾部栞の分まで、きっちり一人前。

トレーを置くと、林田さんは声を落として言う。

「綾部嬢もお呼びしてきますね」

言い終えたあと、恐る恐る伊沢赤司の顔色をうかがう。

ベッドに腰掛けた男は、表情ひとつ動かさなかった。

林田さんはほっと...

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