第117章 赤司、赤が嫌いなの?

伊沢赤司の評を聞いた隣の女は、すぐさま唇を尖らせた。

「なによ。すごく似合ってるじゃない」

綾部栞へ惚れ惚れした視線を向けたまま、伊沢赤司の腕をきゅっと引く。甘えるみたいに。

「赤司、私も真っ赤なの、試したい」

さっき上の階で、彼女は鮮やかな赤のドレスを選んでいた。けれど伊沢赤司は、ひと言で切り捨てた。似合わない、と。

それなのに今、綾部栞が着ている赤は、息をのむほど綺麗だ。

なら自分も、と欲が出るのは当然だった。

伊沢赤司の瞳がわずかに沈む。踵を返し、店の外へ向かって歩き出した。

「好きにしろ」

女は不満げに鼻を鳴らし、慌てて後を追う。

「赤司って、赤が嫌いなの?」

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