第121章 伊沢赤司はずっと見ている

桜井蝶は伊沢赤司をちらりと見やった。視線が綾部栞のほうへ露骨に流れていない。――隠し方が上手い。

彼女は薄く笑い、すべてお見通しだと言わんばかりに目を細めた。

「赤司。ダンスの相手、替えてあげようか?」

伊沢赤司は答えない。瞳は冷えたまま。

桜井蝶は小狡い笑みを浮かべる。

「でも、条件があるの」

「言え」

伊沢赤司の表情は崩れず、声音だけが淡々としていた。

桜井蝶は口角をわずかに上げ、囁くように言う。

「最近、うちの父の隠し子が騒ぎすぎてて。桜井家の跡取りの座が揺らぐの、嫌なの」

「だから――あいつを処理してくれる?」

伊沢赤司なら、隠し子のひとりやふたり、どうとでもで...

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