第124章 彼の心にはまだ佐野小雪がいる

坂東補佐は、伊沢赤司の向こうがしばらく無言なのを感じ取ると、すぐさま言った。

「伊沢社長、ご安心ください。こちらで必ず、佐野嬢に説得して太田海を指名してもらえるよう尽力します」

その言葉が終わるか終わらないかで、低く沈んだ声が返ってきた。

「いい」

「彼女が許すと言うなら、許せばいい」

「太田海の規約違反についても、こちらは当面追及しない」

坂東補佐は目を見開く。驚きが、ほんの一瞬だけ瞳を走った。

こちらはすでに太田海の違反の証拠を押さえている。佐野小雪が名指しで証言しなくとも、立件して放り込むことは可能だ。

商業犯罪なら、入ればおよそ五年。佐野小雪が指名してくれれば、刑はさ...

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