第136章 彼女は酔った

伊沢赤司は酒を飲み干した直後、綾部栞から向けられていた視線に気づいた。ふっと表情が固まり、胸の奥に、理由の分からない後ろめたさが湧く。

気を引き締めてグラスを置き、もう一度彼女を見る。だが綾部栞は、すでに視線を引っ込めていた。

五味がグラスを手に綾部栞の前まで来て、にこやかに酒を勧める。栞はめったに飲まない。けれど断りづらく、唇を濡らす程度にひと口だけ含んだ。

明日は手術の予定もない。少しくらいなら――そう思ったのが甘かった。

一度口をつけた途端、次から次へと人が来る。断る口実が見つからないまま、ほとんど酒を飲まないはずの綾部栞は、食事が終わるころには強い酒を2杯も飲んでいた。

も...

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