第137章 元夫

綾部栞は、本当に気分が悪かった。

これまで酒なんて、あんな量を飲んだことがない。酔うって、こんなふうに世界がぐにゃぐにゃして、胃の底からせり上がってくるものなのか――と、身をもって知った。

しかも伊沢赤司に抱え上げられたとき、何度か身体が揺れて、そのまま車まで運ばれて……揺さぶられるたび、胃の中身がぐるぐるとかき回される。

すでに車内へ乗り込んだ伊沢赤司は、腕の中の彼女の青白い顔を見るなり眉間に深い皺を刻んだ。抱く腕は緩めないまま、低く言う。

「吐きたいなら、吐け」

言い終えるか終えないかのうちに、栞は本当に吐いた。

食事はほとんど口にしていなかったから、出てきたのはほぼスピリッ...

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